東京地方裁判所 昭和42年(ワ)10228号 判決 1969年3月14日
原告
椿正年
被告
大井交通株式会社
主文
被告は原告に対し七四万二九三五円および右金員に対する昭和四二年九月三〇日以降支払い済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。
原告の被告に対するその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の、その余を被告の、各負担とする。
この判決は、原告勝訴の部分に限り、かりに執行することができる。
事実
第一当時者双方の求める裁判
一 請求の趣旨
(一) 被告は原告に対し二五六万四七六一円および右金員に対する昭和四二年九月三〇日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。
(二) 訴訟費用は被告の負担とする。
(三) 仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
(一) 原告の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当時者双方の主張
一 原告の請求の原因
(一) (事故の発生)
原告は、次の交通事故によつて傷害を受けた。
(一) 発生時 昭和四一年一月一八日午前零時四五分頃
(二) 発生地 東京都品川区東大井町二三番地先第一京浜国道路上
(三) 被告車 事業用普通乗用自動車(品川五う二九一号)
連転者 渋川平八郎(以下、渋川という。)
(四) 原告車 自家用普通乗用自動車(品川五ふ九三〇四号)
運転者 梶原幸雄(以下、梶原という。)
被害者 原告(同乗中)
(五) 態様 品川方面から大森方面に向けて進行してきた被告車は事故現場の道路端で右車輛より乗客を降ろし、品川方面に右転回を開始したところ、後方、すなわち品川方面から大森方面に向けて進行してきた原告車と衝突したものである。
(六) 結果原告は右大腿骨下端関節内複雑骨折、脛骨骨折、右腓骨骨頭々折、下顎部裂傷および右上腕骨々折の傷害を受けた。また、原告は、右膝関節伸屈一七〇度、屈曲九〇度から一〇〇度の後遺症を残し、正座は不可能であり、あぐらをかくこと長時間佇立することも困難である。
(二) (責任原因)
被告は、被告車を所有し自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条により、本件事故により生じた原告の損害を賠償する責任がある。
(三) (損害)
原告は、本件事故により、以下の損害を受けた。
(1) 栄養費 二万二六五〇円
原告は、本件受傷により、昭和四一年一月一九日より同年六月一〇日まで、更に、同年九月九日より同月二一日まで合計、一五一日間京浜中央病院に入院したが、その間、医師の指示により一日平均一五〇円の栄養費(牛乳、タマゴ、果実等)を支出した。
(2) 毛布等の購入費 一万一八〇〇円
原告は入院に際し、敷ふとん、掛ふとん及び毛布各一枚を購入した。
(3) 原告の家族の通院交通費 四万五七六〇円
原告の家族は、原告が入院していた昭和四一年一月一九日から同年六月一〇日まで及び同年九月八日から同月二一日までの間、一四三日にわたり自宅(品川区大崎明電舎前)より入院先である京浜中央病院(品川大井立会川)まで毎日タクシーで往復し、一日三二〇円、合計四万五七六〇円の支出を余儀なくされた。
(4) 原告の通院交通費 二万七二〇〇円
原告は第一回目の退院日の翌日たる昭和四一年六月一一日から第二回目の入院の前日たる同年九月七日まで(但し、六月一五日より七月一四日までの温泉療養の日を除き)五八日間及び第二回目退院日の翌日たる昭和四一年九月二二日より同年一一月一五日までの隔日二七日間、合計八五日間、患部マッサージのため同病院までタクシーで通院し、一日三二〇円の割合による往復タクシー料金を支出した。
(5) 転地・療養費 四万二二〇〇円
原告は医師の直接の指示により昭和四一年六月一五日より同年七月一二日までの二〇日間、温泉転地療養のため新潟県北蒲原郡月岡温泉に赴むき、転地療養費三万九二〇〇円及び往復旅費三、〇〇〇円の支出を余儀なくされた。
(6) 雇人費用 三三万四〇〇〇円
原告は、東京都品川区東大井五丁目二六番地で酒場「サタン」を経営するとともに自からバーテンダーとして同所で働いていた。ところが、原告は、本件事故により店に出ることが不可能となつたので、原告の代りとしてバーテン新山正一を本件事故発生の日の翌日たる昭和四一年一月一九日より同年一二月二八日(但し、第三日曜日を除く)までの三四七日間、一日一、〇〇〇円の約束で雇用を余儀なくされ、合計三三万四〇〇〇円を同人に支払つた。
(7) 逸失利益 五二万八〇〇〇円
原告は、東京都内の各ホテルの給仕を、ホテルボーイ協会の斡旋を受け毎月一〇日間勤務して、一日一、二〇〇円の収入を得ていたものである。しかるに、本件事故により、原告は、昭和四一年一月より前記収入を得ることができなくなつたものであり、かつ、ホテルの給仕は殆んど佇立を条件としている職業であることから事故後は前記職業に就くことが全く不可能となつたものである。そこで、原告は、向う三年間、一年間一二〇日、合計四四〇日間、一日一、二〇〇円の割合による得べかりし利益を失つた。
(8) 着衣損傷 五万円
原告が事故当時着用していた五万円相当の背広上下及びオーバーは本件事故により血痕、車輛の油の付着又は破損等により殆んど使用不可能となつたものである。
(9) 転居費用 五七万四〇〇〇円
原告は、前述のように右膝関節屈曲不完全のため、用便の際、膝を屈曲することが不能である。したがつて、事故前に賃借していたアパートが和式トイレであるため、事故後昭和四二年一月二七日より洋式トイレの設置してあるアパートに転居した。そのため、原告は、転居前のアパートの賃料一月七、五〇〇円と転居後のアパートの賃料一月二万二〇〇〇円の差額賃料一万四五〇〇円(昭和四二年二月より向う三年間五二万二〇〇〇円を請求する。)並びに転居時に要した礼金三万円及び仲介手数料二万二〇〇〇円を支出した。
(10) 慰謝料 二〇〇万円
原告は、事故当時三四才で、妻子があるところ、本件受傷により、右膝関節伸展制限一七〇度及屈曲制限九〇度―一〇〇度の後遣症を残したため杖を常用しなければ歩行が困難な状態になり、前記の如く原告において発生する積極的損害並びに消極的損害についても一応向う三年間の保証を求めたものであるが、実際は原告が一生この損害に甘んじなければならない状態にある。したがつて、原告の肉体的並びに精神的打撃並びに将来の損害を考えれば二百万円が相当である。
(四) (過失相殺)
本件事故の発生については、原告が梶原に酒を饗応して原告車を運転させた過失も寄与しているのであるから、この過失を二割とみて過失相殺をすると二九〇万八四八八円となる。
(五) (損害の填補)
原告は大和信用株式会社および梶原幸雄から既に八五万円の支払いを受け、これを右損害に充当した。
(六) 弁護士費用 五〇万六二七三円
以上により、原告は被告に対し右損害賠償を請求しうるものであるところ、被告がその任意の弁済に応じないので、弁護士たる本件原告訴訟代理人にその取立てを委任し、東京弁護士会所定の報酬範囲内で手数料及び成功報酬として五〇万六二七三円を支払うことを約した。
(七) (結論)
よつて、原告は、被告に対し、二五六万四七六一円およびこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和四二年九月三〇日以後支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求の原因に対する被告の答弁ならびに抗弁
(一) 第一項中(一)ないし(五)は認める。(六)は知らない。
第二項は認める。
第三項は、争う。
(二) (免責)
被告車の右後部フエンダー附近に、梶原の運転する原告車の右側ドア附近が衝突したとき、被告車は、後輪タイヤをのこすだけで、すでにセンターラインを越えており同車輪の頭部は品川方向に向きを変えつつあつた。被告のタクシー運転者渋川は、本件事故現場附近の道路端で右車輛より乗客を降ろし、品川方向へ右転回をすべく発進する際、原告車が約八〇米以上後方にあるのを確認し、後部右側方向指示器を点滅させたうえ右転回を関始したのであつて、同人には何ら注意義務を怠つた事実はなく、全く無過失である。
これに反し、梶原は、前方にある車輛の動静に注意せず、時速六〇キロメートルを越える速度を落すことなく直進したため本件衝突事故を起したもので、右事故は、同人の一方的過失によつて起きたものである。
右のとおりであつて、渋川には運転上の過失はなく、事故発生はひとえに梶原の過失によるものである。また、被告には運行供用者としての過失はなかつたから、被告は自賠法三条但書により免責される。
(三) (過失相殺)
かりに右事実が認められないとしても、本件事故発生については、原告の過失も寄与しているのであるから、賠償額算定につき、これを斟酌すべきである。
すなわち原告は、前記「サタン」のバーテンダーとして、本件事故直前まで梶原に飲酒させていたもので、同人らが連れだつて同店を出るときは、右梶原はかなり酩酊しており、事故発生のときにおいても、飲酒のため舌がもつれているような状態にあつた。原告はそのような状態にあるのを知りながら梶原の運転する原告車にホステス三名と一緒に同乗したものであつて、本件事故の発生については、運転者に飲酒させた原告の過失は重大であるといわねばならない。
第三当事者双方の提出援用した証拠〔略〕
理由
一 (事故の発生)
請求の原因第一項の事実中、原告主張の日時、場所で梶原運転の原告車と渋川運転の被告車とが衝突したことは当時者間に争いがなく、〔証拠略〕によれば、原告は本件事故により頭部並びに全身打撲、下顎部挫創、右上腕骨上顆部骨折、左大腿骨下端部膝関節内骨折、左脛骨膝関節骨折、右腓骨々折の各傷害を受けたこと、また、後遺症として、右膝関節伸展制限一七〇度ならびに屈曲制限九〇度ないし一〇〇度を残し、正座は不可能で、あぐらをかくことも困難となつたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。
二 (責任原因)
被告が被告車を所有し、自己のために運行の用に供していたものであることは、当時者間に争いがないから、免責事由の認められない限りは、被告は、本件事故により生じた原告の損害を賠償する責任がある。
三 (免責)
〔証拠略〕を総合すると次のような事実を認定することができる。以下の認定に反する証人渋川平八郎の証言は措信しがたく、他に以下の認定に反する証拠はない。
すなわち、本件事故現場は東京都品川区東大井二丁目二三番地先の幅員二三メートル(内歩道幅員二・五メートル)の歩車道の区別のあるアスコン舗装の第一京浜国道路上で、両側は商店、住宅が並び夜間照明として五〇メートル間かくで交互に水銀照明灯が設置されており、本件事故当時、商店は閉店していたが、水銀灯が点灯され五〇メートル先まで容易に見とおしがきく状態にあつた。そして、渋川は、被告車を運転して品川方面から大森方面に向けて本件事故現場附近に至り、道路左側に停車した。一方、梶原は、本件事故直前に飲酒した上、原告車を運転して品川方面から大森方面に向けて時速約六〇キロメートル以上でセンターライン寄りを進行し、事故現場に至り、道路左側部分に停車している被告車を約二五メートル先附近に認めたが、前記速度のまま進行した。この間、渋川は、同乗者を下車させた後、後方の品川方面から進行してくる原告車を認めたが、その通過前に転回できるものと判断し、転回の合図をした上時速約一〇キロメートル位で品川方面に向けて転回進行したところ、道路中央附近で、原告車が接近してくるのを認めこれを避けようとし、梶原もハンドルを左に切つて被告車を避けようとしたが間に合わず、原告車の右側ドア附近と被告車の右後部フエンダー附近とが衝突したものである。
ところで、自動車運転者は、転回する場合には、自己車輛の右後方を追従する車輛等の進路を妨害し、不測の事故を発生させるおそれがあるから、転回の合図をし、徐行しつつ、特に後方の安全を確認した上、転回すべき注意義務があるのに、転回の合図はしたが後方の安全の確認、判断が十分に行われなかつた過失により本件事故が発生したものといわなければならない。もつとも、梶原としても、被告車を運転していた渋川が転回の合図をした後、転回進行したのであるから、被告車の転回を事前に知つて徐行した上、ハンドル、ブレーキ等の措置を確実に操作すれば、本件事故の発生を防止することができた筈であるのに、飲酒の上、これを怠つた梶原の右過失もまた本件事故の一因をなすものということはできるが、これをもつて、前記渋川の過失を左右するものということはできない。そうだとすれば、その余の点を判断するまでもなく、免責の抗弁は理由がないというほかはない。
四 (過失相殺)
〔証拠略〕によれば梶原は、本件事故発生前、原告車を運転し知り合いの原告の経営するクラブ「サタン」に立寄つたところ、閉店する様子であつたので、原告のほか同店のホステスらを送るため、店の外で同人らを待つていたところ、原告からウイスキーをダブルで一杯すすめられるままに飲んだこと、その直後、原告らは梶原の運転する原告車に同乗して食事にいく途中、本件事故が発生したが、右事故の原因は、右飲酒によつて梶原がハンドル、ブレーキ等の操作が確実に行われなかつた過失もその一因をなしていたものと認められる。
ところで、原告は、梶原が飲酒直後、原告車の運転に従事する者であることを知りながら、同人に酒を提供して飲ませ、自らも原告車に同乗して運行の利益を受けるとともに、梶原の過失のうち、この飲酒も一因をなして、本件事故を発生させたものである以上、酒を提供した原告は、直接にはその運転行為に関与していなくても梶原の過失に近い程度の過失を認めるべきものである。そして、前記認定の事実によれば、梶原と渋川の双方過失の割合は五分、五分と認めるのが相当であるから、原告の過失は四割と認めるべきであつて、原告の右過失は、被告が賠償すべき損害額を算定するについて斟酌すべきものと認められる。
五 (損害)
(1) 栄養費
〔証拠略〕によれば、原告は、本件受傷により(昭和四一年一月一九日より同年六月一〇日までのうち、一三八日、更に同年九月九日より同月二一日まで)合計一五一日間京浜中央病院に入院したが、その間医師の指示により一日平均一五〇円程度の栄養費(牛乳、タマゴ、果実等)を支出したことは容易に推測しうるから、合計二万二六五〇円の損害を受けたものということができるが、原告の前記過失を斟酌すると、右金額の六割に相当する一万三五九〇円を被告に負担させるのを相当とする。
(2) 毛布等の購入費
原告は入院に際し、敷ふとん、掛ふとん及び毛布各一枚を購入したと主張するが、本件事故と相当因果関係にある損害とは認められない。
(3) 原告の家族の通院交通費
原告は、原告の入院中である昭和四一年一月一九日から同年六月一〇日まで及び同年九月八日から同月二一日まで合計一四三日間、原告の家族が自宅(品川区大崎明電舎前)より入院先である京浜中央病院(品川大井立会川)まで毎日往復三二〇円の割合によるタクシー料金として合計四万五七六〇円を支出したと主張するが、右支出が直ちに本件事故と相当因果関係にある損害とは認められないというべきである。
(4) 原告の通院交通費
〔証拠略〕によれば、原告は、第一回目の退院日の翌日たる昭和四一年六月一一日から第二回目の入院の前日たる同年九月七日まで(但し、六月一五日より七月一四日までの温泉療養の日を除き)五八日間及び第二回目退院日の翌日たる昭和四一年九月二二日より同年一一月一五日までの隔日二七日間、合計八五日間、患部マッサーヂのため同病院までタクシーで通院し、一日三二〇円の割合による往復タクシー料金、合計二万七二〇〇円を支出したことを認めることができるが、原告の前記過失を斟酌すると、その六割にあたる一万六三二〇円を被告に負担させるのを相当とする。
(5) 転地療養費
〔証拠略〕によれば、原告は医師の直接の指示により昭和四一年六月一五日同年七月一二日までの二〇日間温泉に赴むき転地療養費三万九二〇〇円及び往復旅費三、〇〇〇円の支出を余儀なくされたことを認められるが、原告の前記過失を斟酌すると二万五三二〇円を被告に負担させるを相当とする。
(6) 雇人費用
〔証拠略〕によれば原告は東京都品川区東大井五丁目二六番地で酒場「サタン」を経営するとともに自からバーテンダーとして同所で働いていたこと、ところが、原告は本件事故により店に出ることが不可能となつたので、原告の代りとしてバーテン新山正一を本件事故発生の日の翌日たる昭和四一年一月一九日より同年一二月二八日までの内三四七日間、雇用を余儀なくされ、合計三三万四〇〇〇円を同人に支払つたが、原告の前記過失を斟酌すると二〇万〇四〇〇円の限度で被告に負担させるのを相当とする。
(7) 逸失利益
〔証拠略〕によれば原告は本件事故発生前六年位前から毎月一〇日間程度東京都内の各ホテルの給仕を、ホテルボーイ協会の斡旋を受け勤務して一日八〇〇円以上の収入を得ていたこと、しかるに、本件事故により原告は昭和四一年一月より前記収入を得ることができなくなつたことを認めることができる。そして原告の前記後遺症を考慮すると、三年間の範囲でこれを認めるのを相当とするところ、中間利息を控除すると、二六万二一七六円となるが原告の前記過失を斟酌すると一五万七三〇五円の限度で被告に負担させるのを相当とする。
(8) 着衣損傷
〔証拠略〕によれば原告が事故当日着用していた五万円相当の背広上下及びオーバーは本件事故により血痕、車輛の油の付着又は破損等により殆んど使用不可能となり同額の損害を受けたことが認められるが、原告の前記過失を斟酌すると、右金額のうち三万円の限度で被告に負担させるのを相当とする。
(9) 転居費用等
〔証拠略〕によれば、原告は、前述のように右膝関節屈曲不完全のため、用便の際膝を屈曲することが困難となつて事故前に賃借していたアパートが和式トイレであるため、事故後洋式トイレの設置してあるアパートに転居したこと、これに伴い、仲介半数料増加した賃料等の負担を余儀なくされるに至つたことを認めることができるが慰藉料とも考慮すれば足りるというべきである。
(10) 慰藉料
原告は、本件事故により先に認定したとおり傷害を受け、入院、通院を続けたが、前記後遺症を残したことが認められこれにより多大の精神的苦痛を受けたことは容易に推認し得るところ、原告の前記過失を斟酌すると、慰藉料は一〇〇万円を相当とする。
五 (損害の填補)
原告は大和信用株式会社および梶原から既に八五万円の支払いを受け、これを右損害に充当したから、これを控除すべきことは明かである。
六 (弁護士費用)
以上により、原告は五九万二九三五円(右なお損害の填補を受ける以前の金額は一四四万二九三五円)を被告に対し請求しうるものであるところ、〔証拠略〕によれば被告はその任意の弁済に応じないので、原告は弁護士たる本件原告訴訟代理人にその取立てを委任し、東京弁護士会所定の報酬範囲内で、成功報酬として五〇万六二七三円を支払うことを約したことを認めることができるが、右一四四万二九三五円の約一割に相当する一五万円の限度で被告に負担させるのを相当とする。
七 (結論)
よつて、原告は被告に対し七四万二九三五円およびこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和四二年九月三〇日以後支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担については、民事訴訟法第八九条、第九二条、仮執行の宣言については同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 福永政彦)